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品川区の学校選択制の現状と問題点

渋谷区立代々木中学校 原 登喜夫

 私は昨年度校長の強制異動対象となりました。そして、2月の役員選挙において支部長に再選されていたにもかかわらず、区教委は区外転を都教委に内申し渋谷区への異動となりました。品川区で学校選択制が実施されてから今年度で小学校は5年目、中学校は4年目を迎えました。この間、都教組品川支部は学校選択制をはじめとした区教委の子ども不在・現場無視の「教育改革」と真正面からたたかってきました。私の異動は「教育改革」に反対する組合の弱体化をねらった露骨で醜い攻撃であると同時に、区教委の自信のなさや焦りの姿を露呈したと思います。ここで学校選択制をはじめとした「教育改革」の現状と問題点についてもう一度整理をして述べていきたいと思います。

学校選択制は学校と教育にどんな影響を与えているか

 区教委は「教育改革」(プラン21)の中で「特色ある学校づくり」として、習熟度別授業や小学校の教科担任制、国際理解教育、小中連携教育などを行うように押しつけています。教育長は「学校選択制と特色ある学校はセットだ。いかに魅力的な特色をつくるかが選んでもらえるかどうかを決める」と校長会で檄を飛ばしました。これを受けて、各学校では特色づくりのためにさまざまなとりくみが始まりました。 

 ある小学校では校長が「うちの特色は考える算数教育」だとして文科省の研究指定を3年間もおこないました。毎年の発表のための準備、一冊の本に仕上げた研究紀要の作成に教職員は忙殺されました。そして、結果は多くの教師が子どもたちの算数嫌いがますます増えたと感じているそうです。それは、「成果」を引き出すために「なぜそういう答えになったか」をわからせるために放課後も残して指導するなど、子どもの学習意欲などを無視してすすめられたからです。

 ある中学校では英語の習熟度別授業がおこなわれています。この習熟度別授業には区も指導助手を配置しているので学級を3〜4グループに分けておこなっています。しかし、できる・できないで分けられていることに対する生徒の反発は強く、とりわけできないグループでは子どもたちのがやる気が全くなく授業にならないという報告を聞いています。

 また、多くの学校では学校をPRするための学校紹介パンフレットやビデオづくり、学校公開が頻繁におこなわれています。今までおこなう必要のなかった宣伝のための仕事量が膨大に増えています。学校公開前になると管理職は校舎内の美化や掲示物に神経をとがらせます。学校のありのままの姿を父母・地域の人に知ってもらい共同して教育をすすめるためではなく、いかにボロを出さないか、見栄えをよくするかという学校公開になっています。

学校がどう選ばれているか、どんな問題点がおこっているか

 こうした中で、父母や子どもたちはどのように学校を選択しているか、端的に言って、このような学校の「努力」にも関わらず、学校の教育内容(特色)を理由に選んだ割合は大変少ないものとなってます。(平成15年度小学校入学者の保護者への区教委アンケート:複数回答での割合1.小学校では学校の近さや通学のしやすさが71%、2.地元の学校だからが32%、3.兄姉が通学しているからが31%、4.子どもの友人関係が21%、5.特色ある教育活動を考えてが18%)

 小学校に入学させるある親はこう語っています。「可能な限り学校を見に行ったがどの学校も同じようなことをやっていた。いい先生だなぁと思う先生もいたが来年いるかどうかわからない。見学をしてどこを選べばいいかますますわからなくなった」これは、「特色」が区教委の指定であり、いわばどの学校も行っているので皮肉にも「特色」になっていないということを父母がきちんと見ているということです。区教委が今まで説明してきた「特色ある学校をつくるために学校選択制を導入する」ということはすでに破綻しています。

 それでは学校選択により具体的にどんな問題が起こっているのでしょうか。ある小学校は昔から私立中学校への入学が多く、いわゆる名門校と言われ人気のあった学校です。選択制が導入されてからはめんどうな指定校変更願は必要なくなったので毎年、希望者が殺到しています。そのためこの学校では小5まで各学年4学級となり空き教室がどんどん普通教室となり、このままでは備蓄倉庫も教室にしなければならなくなっています。また、周辺の学童保育所への希望も急増しため抽選となり地元の子どもたちが遠い学童に行かなければならないという矛盾も生じています。さらに学区域外から通学する子どもが多いため子ども達は家に帰っても同じ地域でいっしょに遊ぶ子どもがいなくなっています。一方でこの学校の周辺の小学校が激減しています。今まで学年60人前後の2学級だったのが40人近くの単学級になっています。

 小学校6年担任の先生はこう語っています。「いつもだと3学期になるとどこの中学校へ行くのか毎日話題になる。しかし、中学校も選択制になってから子どもも親もどこへ進学するか話さなくなった。」中学校の選択では子どもの友人関係が大きな要素になっています。ある特定の子どもの進学先を見てから決めるなどということもおこっています。全体的に中学校ではいわゆる「荒れた学校」「問題の生徒がいる学校」をさけて他の中学校に入学することが続いています。その結果、入学者数が激減した5校が1学級校になりました。一昨年度、わずか9人の入学という中学校も現れました。

「学力テスト」の成績公表の問題点とその本質区教委は作

2003年の4月10日、中学一年生全員を対象に国語と算数の学力定着度調査(学力テスト)を実施しました。そして、5月7日、テスト結果の平均点を出身小学校別に公表するということがマスコミで報道されました。成績が公表されれば学校を選択する基準の中に「学校別の成績」という要素が入り小学校段階から学校間競争がさらに激化し序列化が進むことは火を見るより明らかです。議会で教育長は学力テストの成績公表の理由を「小学校での指導計画の見直しと教員の資質向上のため」と述べました。学力テストの成績公表の目的が、教師の意識や指導方法を変えるためだということです。つまり、特色づくりでは各学校の違いが出ない、点数というわかりやすい違いを公表することによって学校選択制が促進され、学校も教師も変わるだろうということです。ここに品川区の「教育改革」の本質が露骨に示されています。

 学校選択制や学力テストの成績公表が教育問題の解決につながるどころか、教育そのものを破壊しています。私たちは、時間かかっても「教育改革」が子どもと教育にどんな影響を与えているかを父母・地域に知らせていき、子どもと教育を守るためにどうすればいいか率直に語り合い、協力・共同のとりくみをさらに積極的にすすめていかなければならないと思います。

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